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Japanese Language

e-Farming プロジェクト

米倉 誠一郎*1

Matin “Maheen” Sheikh*2

  • 1) バングラデシュにおけるe-Farmingプロジェクトの目的

e-Farmingプロジェクトは、ICTイノベーションと日本の農業技術を用いて、バングラデシュのガンジス川の川中や河口に浮かぶ農村島(現地で”チョー(Chor)”と呼ばれる)の社会問題を解決することを目標に掲げている。

  • 2) プロジェクト設立の背景

○地形的、環境的問題

バングラデシュのガンジス川の川中や河口には多くの島(Chor)があり、そこには何百万人もの人々が住んでいる。しかしその地域の生活水準は非常に低く、学校も大学も、病院もない。さらに、川の対岸にある学校への通学には小さいボートで2時間もかかるため、子供たちが学校に行くのはかなり大変である。

○雇用機会の不足

何百もの島々は有効な土地活用が行われておらず、農産物の量産試作もほとんど行われていない。何百万人もの貧困層がそこに集中し、そのほとんどは主に人力を使った自給的な農業や漁業を営んでいる。チョー(Chor)地域には家族を十分に養っていくだけの雇用機会が非常に不足している一方で、労働力は豊富に存在する。

○技術導入と技術教育の遅れ

チョー(Chor)地域にはまだ農業機械や品種開発などの現代の農業技術は導入されておらず、伝統的な農業技術や器具が使われている。農家の人々も、多収量品種や高付加価値農産物、有機農薬や有機農業技術に関する知識を持っていない。また、そういった新しい農業技術の教育システムも整っていない。

○市場の機能不全

基本的に、チョー(Chor)地域には農家が農産物を売る市場は存在しない。そのため、彼らは農産物を売るために川の対岸へ行かなければならないが、運搬作業は不便である上に非常に危険である。さらに、

一応に存在する市場では仲介業者が有利に農産物を取引するため、農家が相応の利益を得たり、貯蓄をしたりすることは困難を極める。農業や漁業従事者が集団的に行動を取れるようにするために、農業・漁業協同組合などを作る施策が早急に求められる。

  • 3) 問題解決のために

○新技術の導入

農家の人々に現代の新農業技術に関する知識を広め、優秀な農業科学者や専門家によるDVD講義による教育や当プロジェクトが提供するトレーニングを通して、チャンドプール(Chandpur)県のチョー(Chor)地域における新農業技術の導入を図る。教育期間は1か月(現地農家が教育の享受に慣れておらず、DVD講義が10回以上繰り返される必要があるため)で、トレーニングはチョー(Chor)地域の農業課の役員とe-Farmingのスタッフが共同で行う。新農業技術とは、日本の新しい農業機械や有機農業技術を指す。

○農業協同組合の結成

農家同士の間に連携を生むため、e-Farmingプロジェクトはこの地域に農協結成の実現を図ろうとしている。農協の協力があれば、プロジェクトでの農業技術トレーニング用の場所、機械などの共同購入や技術の共同学習機会、また銀行口座開設の提供がしやすくなるだろう。

○市場づくり

e-Farmingプロジェクトは前述の農協、バングラデシュや日本の大企業と共に公正な市場を作ることも目標に掲げている。市場を通じて、大企業は肥料や農業用機械、またそれらに関連するものを売ることができ、農家は仲介業者の干渉を受けずに農産物を売ることができる。それと同時に、多くの雇用が創出され、有機肥料ビジネスは安全な食料生産を可能にする市場を生み出すかもしれない。

○持続可能な未来の保障

農家の収入が2倍以上になれば、彼らは進んで子供たちを川の対岸の学校に行かせるようになるだろう。子供たちは学校の寮に住めるようになり、教育の効率が良くなるだろう。当プロジェクトの調査の結果、農家の収入が多くなれば、子供たちがより高度な教育を受けられる可能性があることがわかった。所得の増加は子供たちに良い影響を与えるだけでなく、農業従事者たちも貯蓄や農協、新技術の知識やトレーニングに対して理解が深まるようになるだろう。こうした動きが周囲に次第に広がれば、持続可能な未来を作っていくことも可能になる。

  • 4) 2013年2月プロジェクト始動

e-Farmingプロジェクトは2013年2月に始動し、ハムチャー(Haimchor)村の農業課との協働に成功した。現在このプロジェクトでは、農家と協同組合を作ったり、一人一人の銀行口座を開設したりしている。チョー(Chor)地域での2つの農業セミナーの開催も実現し、200人もの農業従事者がe-Farmingセミナーに参加した。そこでは、チョー(Chor)地域に最善の農業方法を検討するため、農業専門家を招いて地元の農家やその家族との話し合いも行われた。

プロジェクト実施対象地域の概要

プロジェクト実施対象地域は、ハムチャー(Haimchor)村のメゾーチョー(MezorChor)である。村の市街地から小さいボート1時間のところにある。人口は3万人で、平均収入は1か月あたり75USドルである。5歳から10歳までの小学校は2つ(各5クラス)で、2校の全校生徒の合計は700人である。高校、大学、病院はなく、人々は適切な衛生管理を行っていない。小学校を卒業した子供たちは、経済的な問題で高校に進学できない。

*1一橋大学イノベーション研究センター 教授

*2イノベーション研究センター e-Education研究室(バングラデシュ)

To make a bridge among farmers, the e-Farming project formed farmers association in the area. Through the association e-farming provides to farmers training space, bank account opening help, joint purchase function and mutual learning opportunity.